入居者紹介「Gorai’インタビュー」vol.71
HADC (広島アートディレクターズクラブ)運営委員長
関浦 通友さん
【クリエイターが自主的に行う作品公開審査会・年鑑発行】
クリエイターのクラブ活動として。
HADCは、幅広いジャンルのクリエイターが個人の資格で参加し、自主的に運営する非営利の会員組織。
東京ADCが1952年に設立され、その地方版として立ち上がった富山、札幌、新潟に続き、2008年に発足した。
今年で16年目。
現在、正会員は約60人(56名。2023.11.30現在)。広島在住の、アートディレクター、クリエーティブディレクター、CMディレクター、グラフィックデザイナー、プランナー、コピーライター、イラストレーター、フォトグラファー、CGアーティスト、WEBデザイナー、プログラマーをはじめとする、広告・出版・映像・デジタル関係に従事するクリエイタ一など、幅広い。
あくまでも「クリエイターとしてのクラブ活動」として会員がボランティアで関わり、年1回の作品公開審査会の開催と、その年の優秀作品を掲載する年鑑の発行をしている。
主な活動は、年に一度の作品公開審査会と年鑑発行。
出品者の名前も伏せ、公開で行うという審査は、珍しい。
審査員には、全国から招く著名なクリエイターのほか、前年度のグランプリ受賞者も加わる。
至って、公明正大な審査である。
運営委員長を務める関浦 通友さん (d&b, sekiura designアートディレクター)は、
「広島のいろんなところに、力のあるデザイナーがいる」
と語る。
会社の看板や、知名度に流されず、公正に審査されるコンペだからこそ、発掘される新人もいる。
公開審査会に来た企業が、クリエイターを知るきっかけにもなり、また、クリエイターを目指す学生たちが運営にボランティアで参加することで、プロの仕事を学ぶ場ともなる。
年鑑には、受賞作品および入選作品を掲載。その数は毎年約200作品を超え、年鑑のデザインおよび監修には、その年のグランプリを受賞したクリエイターがあたる。
正直、大変な仕事だ。
関浦さん自身も、2011年にグランプリを獲得し、次年度の年鑑を手掛けた経験があるが、広島を牽引する名だたる先輩クリエイターからアドバイスを得、また、バトンタッチされたそのデータから、多くのことを学んだという。
ここ数年は、呉や福山のデザイナーがグランプリをとるなどし、広島全体のクリエイティブが上がっている。
「HADCは、そのアクセスポイントの役割を果たしている」
と、関浦さん。
今年の “H”ADCグランプリ作品は、中山慎介さんの「ひろしまフラワーフェスティバル」だった。
実はこのラッピング広告、広島の若いクリエイターたちの感性に驚いた中国新聞社の役員が、その感性を活かしたいとの思いでHADCに依頼し会員によるコンペを行って実現したもの。
広告代理店や企画会社が、プランナーやディレクターとチームで制作するプラントは違う切り口での紙面作りで、
「デザイナーが提案する、フレッシュで見事な回答だった」
と、関浦さんの言葉に力が入る。
紙面が持つパワー、明確さがそこにある。
「これでいいんだ」
と思える作品だったという。
広島ADC公式サイト
クリエイターたちの有志により、続く力活動。
年が明け、春になればまた今年の受賞作品を掲載した年鑑が完成する。(毎年7~8か月かかる大作である)
年鑑は、正会員や賛助会員(スポンサー)に配布し、協力者や学校など関係者に寄贈するほか、デザイナーが販売も行います。
これらの作業もすべて正会員であるクリエイターたちが行い、来7月には、その年の審査会に向けたキックオフPartyを広島・備後で開催する予定。
8~9月頃にはまた、その年の審査会と、表彰式およびPartyを開催し、年鑑の制作にかかる・・・
この一連の活動を、クリエイターたちの心意気で15年間も続けてきたことは、本当に、凄い!
おかげで我々も、HADCのクリエイターたちと、様々な商品開発を行っている。
16年前、先進各地を巡り、広島のデザイン業界を巻き込んでHADC創設に尽力した、現会長納島 正弘 氏(現 広島市立大学芸術学部教授)の、功績は大きい。
インタビュアー : (株)ソアラサービス 代表取締役社長 牛来 千鶴
掲載日:2023年12月20日
~関浦さんへの取材後インタビュー~
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